音楽コラム集|映画研究部NOAH
2021.03.29
売れないソングライターのジャックが音楽で有名になるという夢をあきらめた日、
12秒間、世界規模で謎の大停電が発生―。真っ暗闇の中、交通事故に遭ったジャックが昏睡状態から目を覚ますと...
あのビートルズが世の中に存在していない世界に!彼らを知っているのはジャックひとりだけ!?ジャックがビートルズの曲を歌うとライブは大盛況。そしてエド・シーランのツアーのオープニングアクトを任され、ついにメジャーデビューのオファーが舞い込んでくる。思いがけず夢を叶えたかに見えたジャックだったが―。
(引用:https://www.nbcuni.co.jp/movie/sp/yesterdaymovie/)
この映画では、ふんだんにビートルズの楽曲と小ネタが扱われている。この映画でジャック役を演じるヒメーシュ・パテルによる演奏シーンはすべて本人による演奏・歌唱であり、どれも本家へのリスペクトを感じる素晴らしいアレンジになっている。(作中で扱われた楽曲はサウンドトラックですべて聴けるので、是非ともチェックして欲しい。)
本作はビートルズファンでなくても基本的に楽しめる内容になっているが、ビートルズ好きには刺さるシーンがいくつかある。
例を挙げると、大手レコード会社のアルバム制作会議に参加したジャックが、アルバムのタイトルやジャケット案に、「アビィ・ロード」、「ホワイト・アルバム」「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を持ってくるが、どれも「ただの道路」、「白すぎる」「変な単語の組み合わせ」など一蹴されてしまう。ビートルズを知らない奴らは...と思わずジャックに共感してしまうシーンが他にも盛り沢山である。
本作ではなんと、エド・シーラン本人がエド・シーラン役を演じている。
役者エド・シーランと本人の歌唱シーンを観られる非常に豪華な映画で、何より本人が作中イジられまくっている。
現代のポップスターのシンボルとして本作に登場するエド・シーランはジャックがスターになるまでのキーパーソンだが、「ヘイ・ジュードは言い回しが古いからヘイ・デュード(相棒)にしよう」などと余計なアドバイスを差し込むシーンは、全てのビートルズファンを激怒させたであろう。
本作はビートルズの無くなった世界で、自分の楽曲以外でスターになっていくジャックの葛藤と奮闘を描いたハートフル・コメディ映画である。無くなったのはビートルズというバンドであり、ジョン・ポール・ジョージ・リンゴは消滅せず存在していることになっている。
ビートルズが無ければ過去の悲劇も存在せず、作中に登場する「あの男」のシーンには涙を禁じ得なかった。
作中ではビートルズに多大な影響を受けたバンド、オアシスも存在しないことになっている。映画の中の話ではあるが、もしかしたら他の多くのバンドやある映画、人物に至ってまで存在しないことになるかもしれないと思ってしまう部分があり、やはりビートルズはすごい。
コアなファンからは、ビートルズはオリジナルメンバーでないと成立しない!という意見があるかもしれないが、活動休止から50年以上経っても彼らの楽曲は未だに色褪せず、革新的であることに変わりはない。
「ビートルズがもし存在しなかったら?」というミュージシャンに限らず誰もが想像したであろうテーマが痛快に2時間に収まった今作、是非ご覧になって頂きたい!
[映画情報]
2019年製作
上映時間:117分
原題:Yesterday
配給:東宝東和
監督:ダニー・ボイル
脚本:リチャード・カーティス
主演:ヒメーシュ・パテル
リリー・ジェームズ
ケイト・マッキノン
エド・シーラン
画像引用元:https://www.universalpictures.com/movies/yesterday
https://www.nbcuni.co.jp/movie/sp/yesterdaymovie/
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