2017年12月27日
劣化とは別?ギターを塗装し直す前に知るべきウェザーチェックの意味
楽器を所有する上で密かな楽しみの一つといえば、経年による変化ではないでしょうか?エイジングによるサウンドの変化はもちろんですが、使い込むことで日に日に風格を増す愛器を眺めて悦に浸ってしまうミュージシャンは後を絶ちません。
レリック加工された楽器が数多く生み出されている現状は「新品のコンディションで見た目だけ貫禄のある楽器とか最高じゃない?」というある種歪んだ嗜好が生み出した現象と受け取ることも出来ます(個人の感想です)。
そんな中、「この新品の楽器をすぐにでも使い込んだ状態にしたい!」という変わった角度から嗜好が歪んでしまった人も世の中には結構な数存在します(個人の感想ですよ)。
そんな中、今回はヴィンテージギターの代名詞といえる「ウェザーチェック」をキーワードに楽器の経年変化とはどういったものなのか調べてみたいと思います。
■天気のことじゃない!ウェザーチェックって何?
ヴィンテージギターの中には表面に細かいひび割れが生じている個体が多くありますが、この現象を「ウェザーチェック」と呼びます。
このひび割れは気温や湿度の変化による木材(ギター本体)と塗装面(ギター表面)の伸縮率の違いにより生じます。あくまで塗装面がひび割れているだけで、木材は無傷です。
この「ウェザーチェック」ですが、人によって「味のあるギター」として大事に扱う人もいれば、「ボロボロになったギター」と受け取って表面をリフィニッシュ(再塗装)する人もいます。受け取り方は様々です。
■ボディの塗装について知ろう
ギター、ベースの塗装は「ラッカー塗装」や「ポリウレタン塗装」が多く使われていますが、ウェザーチェックはこの塗装方法と密接に関わっています。
(1)ラッカー塗装
ラッカー塗装は作業行程に手間暇がかかっており(非常に薄く塗ったあと乾燥させてまた塗装...を何度も繰り返します)、比較的高級なモデルに使用されています。木材がよく鳴りやすいというメリットがありますが、その半面耐久性が低く、キズが付きやすい上に個体差が出やすいというデメリットがあります。
(2)ポリウレタン塗装
ポリウレタン塗装はラッカー塗装に比べると耐久性に優れています。また、製造方法もラッカー塗装に比べシンプルなため、個体差が出にくいとされています。また、製造コストを抑える事が出来るため、エントリーモデルから過酷な環境で使われることを想定したシグネイチャーモデルまで幅広く使われています。ただラッカー塗装に比べ厚く塗られているため、木の鳴りを抑えてしまうと言われています。
ウェザーチェックは環境の変化に弱いラッカー塗装のギターに生じます。ポリウレタン塗装のギターには基本的にウェザーチェックは生じません。
■ウェザーチェックとクラックの違いと対処法
ウェザーチェックとクラック、どちらもボディのヒビ割れを指しますが、
ウェザーチェック・・・表面塗装のヒビ割れ
クラック・・・ボディ本体のヒビ割れ
として分類される傾向にあります。
クラックは割れた箇所に細板を埋め込みリペアするのが一般的ですが、ウェザーチェックは経年変化による「味」としてそのままにしておくギタリストが多いです。表面を磨く場合は研磨剤やシリコンの入っていないポリッシュを使うとピカピカになりすぎず自然な仕上がりとなります。
賛否はありますが、ウェザーチェックを筆頭に経年による変化は楽器の魅力を引き立てる要素のひとつです。音の良さも大事ですが、見た目が好みかどうかも楽器と長く付き合う上で外せません。
スタジオでは沢山の楽器やミュージシャンの方々を見かけますが、魅力的な楽器を大事に扱っている方はその楽器以上に素敵に見えます。そんな方を見るたびに自分ももっと愛情を持って楽器を扱おうと思うのでした。