音楽コラム集|映画研究部NOAH
2017.03.19
昨日、2017年3月18日、チャック・ベリーが亡くなりました。 「ジョニー・B・グッド」、「メイベリーン」、「ロール・オーバー・ベートーベン」などのロックンロールの聖典とも呼ぶべき名曲の数々を生み出した「あの」チャック・ベリーですよ。 セントルイスの自宅から救急を求める通報があったが、隊員が駆け付けたころにはすでに息を引き取っていたとのことです。享年90歳。 90歳!なんという大往生。 エレクトリック・ギターをという楽器がロックにおいて重要な役割を果たすようになったのはひとえにチャック・ベリーの功績。もちろん、彼自身の出自がブルースにあることを考えればギターがメインに躍り出るのは必然ではあったのですが、「ジョニー・B・グッド」のイントロはもはや発明であるし、多くの類似曲が生まれたし、自身も繰り返し引用しました。 ビーチ・ボーイズは「サーフィン・USA」などのチャック・ベリーの作法にのっとった名曲を多く残してますし、 ジミ・ヘンドリクスは強烈なファズとフィードバックで、 ジョニー・ウィンターはミニ・ハムバッカー独特の乾いた音色でストレートにカバーしました。 アメリカ国内のみならず、イギリスにおいてもビートルズのジョン・レノンはチャックの崇拝者であったし、 ローリング・ストーンズのデビュー・アルバムではキース・リチャーズがチャック・ベリーからの影響を色濃く残したプレイを披露しています。 みんな、チャックが大好きなんですね。 「ヘイルヘイルロックンロール」という60歳を迎えたチャックに迫ったドキュメンタリー映画があります。映画が作られたのは80年代の後半で、チャック・ベリーはキャリア的には既に歴史の教科書の1ページに載っているレベルの人だったと思います。筆者ももちろん見ました。そこに映っていたのは金にシビアな頑固ジジイでした。あまり人に心を開かず、「俺を誰だと思っている。チャック・ベリーだぞ」というオーラをビンビンに放っていました。バックバンドを持たず、「チャック・ベリーの曲を知っている」という条件で行く先々でメンバーを集めてツアーを行い、一人ギターを持って飛行機で移動する姿も映っていて、なんだか身内を作らないようにしているようでちょっと寂しい人に見えました。映画のクライマックスのためにコンサートが企画され、チャック愛あふれ出るストーンズのキース・リチャーズが真心こめてバンマスを務めることになります。しかし、まぁまぁチャックの理不尽な対応が炸裂しまくりでして、不貞腐れながらも耐えるキースが本当に健気で、途中からはもうキースばっかり気になってしまいました。コンサートはもちろん映画の大団円を飾り、ラストはキースの「疲れた、しばらく休む」みたいな発言で終了だったような記憶があります。また、見たのがだいぶ前なのでうろ覚えなところもありますが、途中でチャックが家でギターをつま弾きながら一人で歌う映像がありまして、これがまたしびれるくらいカッコいいんです。静かな曲でしっとりと歌い上げてました。これは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」より先にロックンロール・ハイスクールの1時間目に見るべき映画です。 もしあなたがバンドでギターを弾く人だったら、あらゆるジャンルであれ、その源流にはチャック・ベリーという一人のブルーズマンがいたことを、この記事を読んで思いをはせていただければ幸いであります。 (NOAHBOOK 高橋真吾)
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