音楽コラム集|From アメリカ
2017.03.11
15年くらい前ですね。とあるアメリカの音大を卒業後、とあるアメリカの街で、細々とバンド活動をしていた当時。 僕らは、CMJチャート(注:全米のカレッジラジオのオンエア率やリクエスト数を集計したチャート)の上位にランクインしても、お客さん10人とか、なんかマニアックな有名人と一緒のレーベルからCDを発売してもらっても、レーベルの社長さんさえもライブを見に来ない、とか、そんな感じで活動に「手詰まり感」を感じていました。 そもそも音大時代から、ジャズの超有名人とかが「CD売っても金にならん。ライブやらなきゃ金にならん。そもそもジャズなど金にならん。」なんてことを散々言っていたのを聞かされた結果、紆余曲折あって始めたバンド活動でした。当時は、テロリスト云々が問題になるちょっと前のCD全盛期であったにも関わらずです。 さらには、その僕の住んでいた「とあるアメリカの街」という場所が、広いアメリカの中でも、ちょっと有名な土地で、とにかく土地代がアホみたいに高い場所だったため、日本でいう「ノルマ」、簡単な話「箱代」とか、そういう大きなお金の壁に立ち向かう根性のない僕は、バンド活動そのものに心が折れてヘナチョコになっているころでした。 そんなこんなのときに、「ツアーをすれば、お金になるぜ!」みたいな話をし始めるバンドさんが、周りに出てきました。 「お金」という言葉に、鼻息を荒らげ、ホイホイその話を真に受ける若き日の自分であるわけですが、実際、音楽をやって超儲けてるのは、ほんの一握りです。そのうえ、長いスパンで生き残る人たちは、さらに少ないです。僕も、スポーツ選手だったら、どんなに有名でも、さすがに引退しなければいけないくらいの年齢ですが、今後の人生を考えたら、もうちょっと現役で生き残っていかなければ、老後は生きていけません。大体、一度儲けたお金は、後先考えずに、その場で使っちゃいます。人間なんて、そんなものです。若いころは、さらにそんな感じです。それに、「ツアーをすれば、お金になるぜ!」は、本当かもしれませんが、「儲かる」までには、1回や2回ツアーするだけでは、きっと無理です。ものすご〜く頑張っても、ちょっと「黒字」になるだけです。 え? 何? 「1回や2回のアメリカツアーで黒字?」 いろいろ言われても、そういうところだけ気になりますね。何なんでしょうね。 その辺りは、次回。 プロフィール 斉藤健太郎 ギタリスト。1974年生まれ。ベストヒットUSA等、80年代音楽テレビ番組の影響をモロに受け、アメリカ音楽に没頭。そんなこんなで、18歳のとき、米国西海岸の某音楽専門学校に入学するため、渡米。1年プログラムの米国音楽専門学校において、日本の常識と米国の常識の違いに戸惑って、自分の無能さに落ち込んだ挙句、一生懸命練習した結果、優秀生徒の一人として表彰される。その表彰状で、ニューヨークにある某音楽大学のジャズ科に、半ばハッタリを使って奨学金をもらい入学。在学中に、当時の有名ニューヨークジャズメンたちの切実な生活状況等々を目の当たりにし、「ジャズは、頑張っても売れない!」という理由で、ジャズ科の生徒2人を口説き、3人でパンクバンド(名前は秘密)を結成。唯一の日本人(英語に訛りがいっぱい)であるにも関わらず、ボーカルも担当。結成1ヶ月後あたりに、某インディーレーベルから、ほかのインストゥルメントプロジェクト(ジャズ)を買われた挙句、レーベルをちょっと騙してデビューアルバムを製作。ギターは、1日平均10時間くらい練習していたものの、歌なんて、ほとんど歌ったこともないのに、作ったデビューアルバムがアメリカCMJにて新作部門4位、全体チャート80位以内を記録。その後、調子に乗って、いろんなバンドで、米国、欧州、台湾、オーストラリア等をツアー。 現在は、OTONANA Trioを率い、2012年以降、5枚のフルアルバム発売。年間平均70回の興行をアメリカにて遂行中。 2017年は、グラミー賞受賞プロデューサーであるBob Cutarella氏を迎え、新譜の録音中。 公式サイト www.otonanatrio.com
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