音楽コラム集|音楽知識系コラム
2013.06.26
あっという間に春を通り越し梅雨に突入ですね。テレビ業界も本来なら特番のない平穏な時期なのですが、昨今は年中特番みたいな編成でなかなか落ち着くことができません。 さて、前回はドキュメンタリー番組の選曲の方法として、ジャンルで絞り込む、という話をしました。今回は、このやり方をもう少し具体的に進めていきましょう。 とあるドキュメンタリー番組の編集があがり、放送できる尺になったものが届いたとします。このVTRのことを完パケと呼ぶのですが、たとえば50分の番組は50分ピッタリになっているVTRです(CM部分は黒みになっています)。それと一緒に、ざっくりとした台本も届きます。台本に目を通し、その後 VTRを見ていきます。 音効さんによって、また番組によって、やり方はいろいろありますが、たとえば僕が担当している「美の巨人たち」では、まず最初に、ざっくりとここからここまでは音楽を入れよう、と思ったカットの時間をレポート用紙に書き出していきます。同時に、シーン的に、ここはSE(効果音)だと思われる箇所にはSEも付けていきます。また、以前お話ししましたが、カットがわりを際立たせたい場合などはクラクションの音を付けたりもします。 街ノイズなどマイクが風に吹かれて録れていないものやサイレンなど番組の進行上邪魔になる音などが入っている場合は、差し替えていきます。意外と多いのが、カメラマンやディレクターの声が入っているケースです(笑)。もちろんドキュメンタリーとして現場の音にこだわらなければいけないのも確かで、ケースバイケースであることは言うまでもありません。 「美の巨人たち」のようにサイドストーリーがドラマ的に展開するものは、結構大変です。 なぜなら、外国語で演技しているものは、日本語のセリフに差し変わるからです。この場合、同録(カメラを回した時に録音した音)は、すべて消えてしまうため、背景音もすべて付け直しになります。街ノイズから足音やドアの開閉音、コップをテーブルに置く音まで、すべてを差し替えていくわけです。 また、タイトル、アイキャッチ(CM前に流れる短いジングル。昔はネットしているローカルの放送局によって流すCMを手動で切り替えていたため、それぞれの放送局にCMに入るタイミングを知らせる役目があったのです)、エンディングなど決まりものの音楽なども付けていきます。 ちなみに、アメリカのドラマは、セリフ、音楽、効果音のトラックをそれぞれ分けてくれているので、セリフだけ差し替えればいいものが多いようです。 これで、最初のステップである作品のベースができあがりました。次回は、楽しい第2ステップ「選曲」です。 中島 克(なかじま まさる) 有限会社サウンド・デザイン・キュービック代表取締役。1985年、東京サウンドプロダクションを退社後、キュービックを設立。TSP在籍時には、テレビ朝日「川口探険隊」の選曲を担当。独立後は、「警視庁24時」「驚きももの木20世紀」「星新一のショートショート」などの番組も担当した。現在は、「美の巨人たち」「THE追跡」「Song to Soul」など楽曲制作も含め幅広く活動している。 [サウンド・デザイン・キュービック ]http://www.cubic-power.net
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