音楽コラム集|音楽知識系コラム
2010.07.22
「自分は日本人なのに、なんで英語を話さなくてはいけないんだ」なんて意見をたまに聞くことがあります。それに対する答えは「コミュニケーションを取るには英語が一番普及しているから」ということではないでしょうか。その場に応じて、フランス語でも中国語でもいいから一番便利な(あるいは唯一使用できる)言語を選択すればいいだけの話だとは思いますが、現在においてその地位は「英語」にある、ということなのでしょう。 英語を話すことが、アメリカ(進駐軍!)やイギリスへの必要以上の媚へつらいであり、「日本人としての誇り」に反すると思う人もひょっとするといるのかもしれません。しかし、私に言わせれば「外国人になめられないためにも英語が必要」だと思います。振り返ってみれば、明治から昭和の初期にかけて、内村鑑三、新渡戸稲造、岡倉天心、鈴木大拙(Daisetz T.Suzuki)と言った人々が「武士道」、「茶道」、「禅」等々について英語で本を書いています。彼らには、自分自身が英語という外国語でこれらの文章を示さなければ日本は野蛮な国だと思われてしまう、という危惧が強くあったと思います。 そういえばヴィスコンティの映画の中で、イギリス人とフランス人の2人が対話する際に、イギリス人は英語を話し、一方フランス人はフランス語を話し続ける、というシーンがありました。当然お互いに理解しあっているわけです。このように自分の母国語を話しつつ他の言語を理解するというのが、理想的な異文化コミュニケーションなのかもしれません。しかし、現実的には何らかの言語を一つ選択して、それを双方が使用しなくてはならないでしょうね。たとえば、日本にいるイラン人と中国人、アフリカ人の共通語は必然的に日本語になっているように。 英語が世界の共通語になったのは第一次世界大戦以降で、その歴史はまだ100年もたってないわけです(それ以前はフランス語)。というわけで、たまたまこの時代に生まれてしまったということで、諦めて(?)英語を学習したほうがいいかもしれません。将来的には中国語が、主要な世界共通語という地位を得ることもあるのかもしれませんが、そんな時代はしばらく来そうにありませんし。 ちなみに中国国内で英語を話す人の数は、アメリカ国内で英語を話す人よりもすでに多い、という話も聞いたことがあります。確認のしようもありませんが、英語の時代はしばらく続きそうです。 鈴木 koyu 浩 バークリー音楽大学入学を機にアメリカへ。その後のシカゴ生活を含め合計6年間滞米。98年より東京で活動。日本在住の外国人ミュージシャンのコミュニティONGEN TOKYO主宰。昨年渋谷を中心に約100回のイベントを開催したJapan Music Weekオーガナイザー。INVAGO, Jett Edwards Group, Tokyo Voltage Controlled Orchestraなど参加プロジェクト多数。 http://blog.livedoor.jp/bassist_koyu/
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